心臓病

僧帽弁閉鎖不全症について

高齢の小型犬に多い病気です。心臓は4つの部屋に分かれており、左心房と左心室の間にある血液の逆流を防ぐ弁のことを「僧帽弁」と言い、この僧帽弁が機能低下していくことで生じる病気が僧帽弁閉鎖不全症です。
僧帽弁閉鎖不全症になると、左心室から大動脈へ血液を送り出す際に、一部の血液が左心房へ逆流することで以下のような症状を引き起こすことがあります。

効果的な治療・日頃のケア

僧帽弁閉鎖不全症は、悪くなった僧帽弁を内科的に完治させることはできません。
そのため、適切な段階から病気の存在に気づき、進行を抑えるような治療をすることが非常に重要です。もし病気が進行している段階で気づいたとしても、下記の治療や対策を行うことで症状を緩和したり、健康寿命を伸ばことが可能です。

お薬の投与

強心剤、血圧の薬、利尿剤などを投与して心臓の負担を軽減していきます。
症状が軽くなったからとお薬の投与をやめてしまうと、症状が再発してしまう場合が多いです。

過度の運動や興奮の回避、
散歩時間の工夫

病気の進行の程度にもよりますが、基本的には初期のステージでは運動制限は必要ありません。しかし、病気が進行していくと日中は家で穏やかに過ごしたり、他のワンちゃんと遊ばせないよう散歩時間をずらしたりするなどの対策をしましょう。今どれくらい病気が進行しているのかを把握することは非常に大切な事です。

併発疾患の治療

心臓は身体のあらゆる臓器と密接に関わっています。慢性腎臓病になると利尿剤による心臓病の治療に制限が出たり、嘔吐による脱水症状でも点滴に制限が出たり、悪性腫瘍を切除したくても全身麻酔のリスクが上昇したりと、他の病気の治療を考慮する上でも心臓の機能は非常に重要です。そのため、心臓以外の定期検診も心がけましょう。また、口腔内の細菌が血液を経由して細菌性心内膜炎の原因にもなります。そのため、口腔ケアを丁寧に行い、症状が重くならないように対策する必要があります。

肥大型心筋症について

心筋(心臓の筋肉)が肥大し、心臓の拡張機能を低下させてしまう病気で、全身に血液を送ることが困難になります。
病状が悪化すると肺水腫や胸水貯留による呼吸困難が生じたり、拡大した心臓の中で血栓が形成されて血管の中で詰まることもあります。全身性高血圧や甲状腺機能亢進症、心臓腫瘍などと見分ける必要性があります。遺伝的な関与は指摘されておりますが、詳しい原因はまだわかっていません。

効果的な治療・日頃のケア

残念ながら肥大型心筋症の原因は解明されておらず、下記のような治療を行い、病状の悪化を防ぐことが主体となります。うまく薬剤で病態をコントロールして、心臓に問題のない子と同じようなQOL(生活の質)を維持する事を目標にします。病気がかなり進行している場合は薬剤での管理が困難で、定期的に胸水を抜去する必要があるネコちゃんもいます。

お薬の投与

心拍数を抑えるお薬、強心剤、利尿剤、血栓予防薬などのお薬を病期に応じて投与します。
うっ血の管理が薬剤のみで困難な場合は定期的な胸水抜去を実施して呼吸状態を楽にします。